切り出し七輪は石川県の能登半島の先端にある珠洲市という町で作られています。この地域には珪藻土岩が無尽蔵にあると言われています。珠洲市には切り出し七輪のメーカーがいくつかあります。
能登の切出七輪は1つ1つ江戸時代から受け継がれた製法で作られ、大量生産の練り七輪とは一線を画した品質を誇ります。
町の外れの山中に珪藻土岩を切出す坑道があります。入り口からは想像できないほどの長い坑道が続いています。毎日少しづつ坑道は伸びてゆきます。坑道内は温度は季節を問わず一定なので、夏は涼しく、冬は暖かいそうです。
坑道内は湿度が高いので、切出した珪藻土岩の一時保管に最適な空間となっていました。数百メートルもある坑道は幾つも枝分かれし、地下深くにも延びています。岩にヒビがあると効率よく切出せないので別の方向に掘り進んだり、地面を掘り進みます。
坑道の先端ではまさに珪藻土岩の切出し作業が行われていました。決められたサイズに珪藻土岩を切出す様子は非常に手際が良く、正確です。作業は全て手作業で、1人あたり1列分の岩壁を切出すそうです。切出された珪藻土岩のブロックは坑道の脇に積み上げられ、必要に応じて運び出されます。
切出した珪藻土岩ブロックを七輪などの商品に成形します。風口やくり抜きをするのに電動ノミを使用します。その先の工程は全て手彫りで仕上げます。取材時には電動ノミを用いた成形工程の途中でした。
成形された七輪は約800度の薪窯で一昼夜焼成されます。焼成中は泊り込みで窯を見守るそうです。職人の勘によって最適な状態で窯出しされます。
仕上げです。窯出しされた後は磨きや装飾の工程を経て立派な商品となります。工程のほとんどが手作業で、大変な手間がかかっています。品質に裏付けられたものを少しだけでしたが体験することができました。
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